医療職の方々、お疲れ様です

 誰とは言えないが、ある保健師の方が、これも誰とは言えないのだが、ある人が自分のことを「パラメディカル」と呼んだ、と憤慨されていた。「パラメディカル」とは医師以外の医療従事者を指す言葉だが、それに対応する英単語"paramedical"の接頭辞"para-"に、医療の本流でないというような侮蔑的な意味合いが感じられるとされ、これを"co-"に替えた「コメディカル」"comedical"と言う言葉を使う方が良いとされることが多い。医療現場での地位はどうしても医師の方が強いので、看護師や臨床検査技師の方々は、同じ医療に携わる職業としてそのあたりは敏感にならざるを得ない。「チーム医療」という言葉が使われるように、主従関係でなく、対等な立場でやりたいという意思の表れか。
 ところがどうやら、こういったこだわりは日本人だけらしい。慈恵医大の多田先生によると(放射線診断こぼれ話34:3題)、米国でも看護婦や技師は"comedical"なのだが、あくまで、

医師の指示のもとに医療協力する医療協力者
なのだそうだ。意味がねじれちゃっているのである。それでは"paramedical"はというと、検眼士(optimetrist)や心理学者(psychologist)、社会福祉士など、
医師以外で患者の治療をするために患者に触れることを許される医療者
を指すんだそうで、医師の指示無しで患者を診られる彼らは医師と競合状態にある。また一方、ある人のページ(病院のコメディアン)によると、英語圏では医師以外は皆"paramedical"であり、Googleの検索結果での用例を示して"comedical"じゃ「喜劇的」だと揶揄している。
 慈恵医大の先生の方が情報源もきちんと記してあるから、少なくとも米国での状況はその通りなのだろう。どうやらもうこれは言葉だけの問題ではなく、彼我の医療体制の違いとか、職場の人間関係が公私混同しやすい国民性とかといった話のようである。
 とりあえず、「パラメディカル」も「コメディカル」も使わない方が良いかも知れない。それでは何の解決にもならないが。