家を建てるだけの建築家

今日放送の建てもの探訪で自宅を紹介していた女性がおもしろいことを言っていた。「建築家は家を建ててはくれるけど、家を作るのはそこに住む自分達」だとのこと。中年女性らしい直截な言葉だと思う。建築士の立場でこう言われたらどう思うだろう。「家を建て」るだけなどと扱われたくはないのが建築士としてのプライドだろうと思う。番組の中でその女性は、自分の寝室に建築士が海の見える大きな窓をつけようとしたのを「最後まで抵抗して」小さくしたのだと自慢していた。その建築士はやはりどのように住まうかを自分なりに想像して発案したに違いない。ただ、結局その家に住み、維持していくのは施主。どんな風に想定してどんな風に工夫しても、引き渡しされた時点で自分の作品は他人が好き勝手できるものになる(納得済みだろうが)。古い建築物を保存するのも結構だが、古いという時点で既に当初建てた物と現存する物とは明らかに変わっている。絵画や骨董品だったら改変された時点で価値が下がるのにね。いったいどこまでが建築の芸術なのだろう。建築士が芸術家の仲間だとしたら(時々そういう風に見えるんだけど)、彼らはどういうところに芸術家としての充実を感じているのだろう。「住んでも良いけど、なるべく触らないでね」とか本音で思ってたりしたら、それはそれでかわいいが。